株式・国債・投信も相続の対象
現金でもない、物でもない債権も、これらと同様に相続の対象となります。
しかしながら、これらを相続する際には相続開始時点において当然に相続分に応じて分割相続されるのでしょうか。それとも、遺産分割協議の対象となるのでしょうか。
この問題は、相続が開始した時点で相続人が自己の相続分の権利を主張して債権者としての権利行使をできるかに影響します。
今回は、株式、国債、投資信託受益権という三つの相続のされ方について解説します。札幌でも株式や国債を遺産として相続される方は多いので、記事にまとめます。
総説
まず、判例はこれらの相続について、遺言による相続の指定を許しています。そしてそのような遺言がない場合においては、当然分割性を否定しています。つまり、遺産分割協議が調わなければ、権利行使ができないとしたのです。それでは、各債権について裁判所はどのような点に着目して判断を下したのかを以下解説していきます。
株式について
株式が当然分割の対象とならない理由は、その性質にあります。株主は、会社から経済的な利益を受ける自益権と、会社の経営に参加したり、その経営を監督したりする共益権という二つの権利を有しています。前者の例は剰余金の配当、破産した場合の残余財産の分配を受けるなど、後者の例は株主総会における議決権の行使です。
そして、株式が共有状態にある場合には、その株主らは勝手に好きな株主権を行使することはできません。権利行使者を定めて、会社に通知することが通常です。
このことから分かるように、同じ株式に帰属している株主の権利を複数名に分割して行使させることは想定されていません。
したがって、株式についてはこれらの権利を行使する者を定める必要があり、当然分割の対象とはならないのです。
国債について
国債については、通常の国債、利付国債、割引国債のいずれにも当然分割性はないと考えられています。その理由には、国債の取り扱いに関する法律の規定があります。
国債の取り扱いについては、「社債、株式等の振替に関する法律」において規定されており、そこでは国債の権利行使については一定額をもって単位が定められています。この規定により、この単位額以下での権利行使は国債に予定されていないといえます。
ところが、もし当然分割を認めてしまえば、この単位以下の金額の国債についてのみ権利を承継する相続人が現れる可能性があり、国債の取り扱いルールになじまない状態となってしまいます。
こうした理由から、単位額以下の権利行使を防ぐために、国債の当然相続性は否定されています。
投資信託受益権
この点については、委託者指図型投資信託と外国投資信託に分けて判断されているので、それぞれの理由付けについて順に確認します。■(1)委託者指図型投資信託について
この投資信託受益権については、株式と類似の判断がなされています。つまり、償還金請求権や、収益支払請求権といった受益的な金銭支払請求権と、信託財産についての帳簿書類などの閲覧を請求し、その運用状況を監督するという監督権という二種類の性質の権利が併存しているのです。
したがって、可分給付を目的とする権利でないものが含まれており、やはり権利行使者を特定する必要がある権利といえます。
よって、委託者指図型投資信託受益権には、当然分割性がありません。
■(2)外国投資信託について
外国投資信託受益権については、判例は明確な判断は示していません。ただし、(1)同様に考える余地があるという含みをもたせた判断をしているのです。このように明言しない理由は、外国投資信託は当該外国の法令により規律されているため、一概に日本の投資信託と同様の二面性のある権利であるとは断定できないためです。
しかしながら、たとえ規律が外国法であるとしても、外国投資信託は日本法により規律する投資信託と類似のものであるといえます。
よって、その性質の類似性から考えれば、(1)同様に当然分割は否定すべきと考える余地が十分に認められるのです。
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