自筆証書遺言で困るのはその「保管」について
札幌で相続・遺言の相談を受けていていると、自筆証書の遺言書のデメリットを聞かれることがあります。デメリットといえば、自筆証書遺言を作成して、困ってしまうのは「保管」です。せっかく民法の要件を満たした形で自筆証書遺言を作成しても、遺言者が遺言書を上手く保管できずに「紛失」してしまうことがあるのです。
札幌で相続・遺言に関する相談を数多く受けることがある当事務所では、自筆証書遺言はその保管の難しさから、あまりおすすめしていません。これまでは公正証書で遺言書を作成することをご提案してきました。
しかしながら、改正相続法により、自筆証書遺言が「法務局」で保管してもらえることになります。法務局で保管されるということは、紛失のおそれがないだけでなく、相続人が、遺言者の死後に法務局で遺言の有無確認をすることが可能になるのです。もちろん札幌の法務局でもその保管を申請することが可能です。
ここでは、改正相続法による「自筆証書遺言の保管」の概要について解説します。
自筆証書遺言を保管してもらうための「要件」
遺言者が作成した自筆証書遺言は、どのようにすれば法務局に保管してもらえるのでしょうか。まず必要なのは、「保管の申請」です。単なる申出ではなく「申請」というからには、一定の申請書類等を提出することになります。
その申請の際に提出する自筆証書遺言は、「無封」のものでなければいけません。これは申請時に法務局の事務官(遺言書保管官)が、当該遺言の民法第968条の定める方式への適合性を外形的に確認するためです。
したがって明らかに民法968条の形式不備である遺言であるならば、その時点で法務局側が不備を指摘してくれることになります。このようなことから、札幌でもこの制度を利用する方は多くいるでしょう。
保管の申請はどこの法務局でするの?
保管の申請については、次の法務局が管轄権を持つことになります。- 1. 遺言者の住所地の法務局
- 2. 遺言者の本籍地の法務局
- 3. 遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局
上記のいずれの法務局でも遺言の保管の申請が可能ですので、もっともアクセスが便利な法務局を選択するとよいでしょう。たとえば住所地が札幌市中央区、本籍地が旭川市、所有する不動産が札幌市南区にあるという方は、おそらく住所地(札幌市中央区)を管轄する法務局が利用しやすいでしょう。 なお、保管の申請は、遺言者が自ら法務局に出頭して行うのが原則です。
法務局に遺言書を保管してもらえば、後に「遺言検索」が可能に
法務局に遺言を保管してもらえば、遺言者の死後に相続人側で遺言の検索が可能になります。まず認められるのは、誰であっても、次の遺言書について、その遺言書を保管している法務局の名称等を証明する書面の交付を請求することです。
- 自己を相続人とする被相続人の遺言書
- 自己を受遺者又は遺言執行者とする遺言書
また、上記の遺言書を保管している法務局に対して、相続人等はその遺言書の閲覧を請求することが可能です。
さらに、遺言書に係る画像情報等を証明した書面の交付を請求することも可能です。
注意しなければいけないのは、これらの請求は「遺言者の生存中は認められない」という点です。遺言者としてはどのような遺言を作成したかは伏せておきたいことが予想されるため、相続人等からの「遺言検索」が可能になるのは相続開始後なのです。
法務局保管遺言書なら、なんと「検認」が不要
これまでは、遺言者の死後に、その者が作成した自筆証書遺言を家庭裁判所に持ち込んで「検認」を受けなければいけませんでした。被相続人及び相続人が札幌の方なら、札幌家庭裁判所に自筆証書遺言を持ち込んで面倒な手続が必要だったのです。札幌で遺言実務に携わる当事務所にも、検認申立のご依頼はまれにあります。しかしながら、法務局に保管される自筆証書遺言については、この検認手続が不要になります。これによって相続人側の負担が大幅に減ることが予想されます。
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当事務所は、札幌・札幌近郊を中心として相続手続(相続登記、相続放棄、遺産調査、預貯金の相続手続等)の無料相談を受付中です。平日夜間・土日の相談にも対応しております。まずはお電話(011-213-0330)かお問合せフォームからお問い合わせください。※相談は面談形式で対応しております。お電話・メールでのご相談には対応しておりません。
※法務局保管の自筆証書遺言については、法務局に直接お問い合わせください。札幌相続相談所では対応しておりません。