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人工生殖と子供の相続権

人工生殖で生まれた子の相続権はどうなる?


札幌で相続業務に取り組んでいますが、時代の変化にともない、相続をめぐって新たに論点が出てきます。

ここで取り上げるテーマは、「人工生殖と子供の相続権」です。昨今の科学技術の発達により、人工生殖で生まれる子供が増えています。相続の分野で、その子たらはどのように扱われるのか、人工生殖で生まれた子の相続権について解説します。


人工生殖で生まれた子

最近では、不妊治療をして子供を授かるカップルも少なくありません。

このように、自然妊娠によらずに、人工授精や体外受精等の人工生殖によって生まれた子を、人工生殖子といいます。

不妊治療として行われる人工生殖には、以下三つの類型があります。

  • 人工授精
  • 体外受精・胚移植
  • 代理母出産

問題なのは、人工生殖における全てのケースにおいて、法律上の親子関係が当然に認められるかというと、そうではない点です。

親子関係が確定する要因は複数ありますが、生まれてくる子にとっての利益を第一に考え、

  • 1. 遺伝子(自然血縁関係)
  • 2. 出産・分娩の事実
  • 3. 親となる意思

以上の要素を総合的に考慮して確定されます。


人工授精によって生まれた子の相続権

夫側に不妊の原因がある場合には、夫の精子を用いてする配偶者間人工授精と、いわゆる精子バンクなどで、第三者の精子を用いてする非配偶者間人工授精の二つの方法があります。

いずれの場合にも、夫の承諾を得たうえで、妻の胎内に精子を人工的に送り込む方法であるので、その後妊娠・分娩をする妻には当然に親子関係が発生します。

問題となるのは、夫側です。

配偶者間人工授精によって生まれた子の場合には、夫との自然血縁関係があるので、嫡出子として扱われます。

他方、非配偶者間人工生殖によって生まれた子の場合は、夫の同意があるとき、つまりはその子の親になる意思があるとして、嫡出推定のある嫡出子と考え、嫡出であることを夫自ら認めたものとし、嫡出否認の訴えは許されないと考えます(東京高決平成10年9月16日家月51巻3号165頁)。 

裏を返せば、夫の同意がないのに非配偶者間人工授精をして生まれた子には、嫡出が否定されることになります。その場合には、夫は嫡出否認の訴えを家庭裁判所に提起して、自らの父性を否定することができます。


体外受精によって生まれた子の相続権

体外受精の場合であっても、親子関係を確定するための考え方は上記の人工授精のときと同じです。


代理母出産によって生まれた子の相続権

現在、日本では、代理母による出産は認められていません。

妊娠・分娩を代理した女性が、生まれた子を手放したがらなかったり、また、その子に障害があるケースには、出産後に誰が引き取るかの問題に発展してしまうことすらあるなど、トラブルの原因になることが多々ある、というのも一つの原因です。

そして、日本の裁判例では、子を懐胎・出産した女性をその子の母とする見解を示しています
(最二小決平成19年3月23日判時1967号36項)。

これは、男性と違って、女性は子を胎内で長期間育てるので、その期間に親子の絆が深められるということが、自然血縁関係よりも重要視されていることのあらわれです。

よって、子の母は代理母となりますが、子の父の確定は少々複雑です。

夫が自らの精子を利用している場合には父子関係が認められますが、第三者の精子を利用する場合は、たとえ夫の同意があったとしても、実際に妊娠・出産をするのは妻ではなく代理母であるので、嫡出推定は及ばず、その夫を父とすることはできません。

この場合は養子縁組以外に親子関係を創設する手段はないことになります。


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