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さて、札幌で相続のご相談に対応しているときに、平成30年の相続法改正について聞かれることが稀にあります。その改正内容の目玉はなんといっても「配偶者居住権」です。配偶者相続人を保護するために新たに創設された制度であり、この権利は登記することも可能です。ここで配偶者居住権の登記の仕方をまとめます。令和2年3月30日に法務省から出された通達の内容です。札幌の方も札幌以外の方もどうぞ参考になさってください。
登記の申請構造について<原則>
配偶者居住権の登記は、いわゆる共同申請によって行います。建物の所有者が登記義務者であり、配偶者相続人が登記権利者です。
例を挙げます。たとえば札幌在住のAが死亡し、相続人が配偶者BとAB間の子Cだとします。BC間の遺産分割協議で、札幌の居住建物(の所有権)はCのものになるものの、Bは配偶者居住権を取得しました。これでBは札幌の家に引き続き住むことが可能です。
この札幌の家について配偶者居住権の設定登記を申請する際は、配偶者相続人Bが登記権利者であり、建物の所有者であるCが登記義務者です。※建物の所有者が登記義務者になるのですから、配偶者居住権の登記を申請する前に、その前提として相続登記が必要です。
補足ですが、配偶者が遺贈で配偶者居住権を取得した場合は、遺言執行者は登記義務者の立場で登記申請ができるものと解されます。
登記の申請構造について<例外>
配偶者居住権の登記は、単独申請で行える場合もあります。それは、遺産分割の審判で配偶者相続人が配偶者居住権を取得した場合です(不登法63条1項参照)。
たとえば上記の札幌の家を巡めぐって、BとCで協議がまとまらなかった場合に、BCが札幌の家庭裁判所で遺産分割の審判を受け、Bに配偶者居住権が認められるような事例です。
申請の際に、住民票や戸籍などは登記原因証明情報として必要?
配偶者居住権が認められるためには、次の要件が必要です。
1:配偶者が被相続人所有の建物に相続開始の時に居住していたこと
2:配偶者が、相続開始時に法律上被相続人と婚姻をしていたこと
これらの要件を満たす場合といえば、たとえば札幌のBが配偶者居住権を取得する典型例は「ABが法律上の夫婦で、ABが長年にわたって札幌の家に同居していた」というケースでしょう。
このようなことから、上記1については住民票が、上記2については戸籍等の添付が必要であると思ってしまうでしょう。
しかし令和2年3月30日民二324号の通達によれば、住民票や戸籍等は必ずしも必要ではなく、提供された登記原因証明情報において上記1及び2の事実が読み取れればよい、とされています。
登記原因はどうやって書く?
登記の原因は、次のように記載します。
配偶者居住権は遺産分割、遺贈又は死因贈与によっては取得することになっているためです(民法1028条1項、民法554条参照)。
なお、特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言のうち遺産の分割の方法の指定がされたもの)では、配偶者居住権は取得できません。もっとも、たとえば札幌のAが「札幌の家について、配偶者Bに配偶者居住権を相続させる」としていたとしても、遺言書の記載から遺贈の趣旨と理解できる場合は、これによって配偶者居住権の設定の登記を申請することが可能です。
申請書には、配偶者居住権の存続期間を書く
存続期間は登記事項です。存続期間について特に定めをしなかった場合は、配偶者相続人の終身の間となります(つまり、たとえば上記のBは、配偶者居住権によって亡くなるまで札幌の家に住み続けることが可能です)。
申請書には、存続期間を書きますが、次のように記載します。
存続期間の定めがない場合
→「存続期間 配偶者居住権者の死亡時まで(又は年月日から配偶者居住権者の死亡時まで)」
存続期間の定めがある場合
→「存続期間 年月日から何年(又は年月日から年月日まで)又は配偶者居住権者の死亡時までのうち、いずれか短い期間」
第三者の使用・収益を許す旨の定めも登記可能
配偶者居住権を取得したとしても、配偶者相続人は、居住建物の所有者の承諾がなければ第三者にその建物を使用または収益させることができません(民法1032条3項)。
しかし、第三者にその建物を使用または収益させることを許す定めがあるのであれば、その定めをあらかじめ登記することは可能です(改正不登法81条の2第2項)。
登録免許税
配偶者居住権の設定登記の登録免許税は、不動産の価額の1000分の2です(登録免許税法別表第一第一号(三の二))。たとえば上記の札幌の家に関して、配偶者居住権を設定する場合、札幌の家の固定資産評価額が2000万円であれば、4万円を納めることになるのです。
また、配偶者居住権の設定仮登記を申請することも可能です。その場合は、不動産の価額の1000分の1を納税する必要があります。
配偶者居住権は、令和2年4月1日以降の相続に適用
配偶者居住権が認められるのは、令和2年4月1日以後に開始した相続についてです。これよりも前の日に開始した相続については認められません。
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