札幌相続相談所では、札幌圏内を中心として、数多くの預貯金の相続手続を代行してきました。その代行実績のなかで、名義預金・借名預金というものが問題になったことが何度もあります。この名義預金・借名預金について、札幌の相続専門家が解説します。
当然、その北洋銀行の預金はAさんの遺産ですから、Aさんの共同相続人全員の協力のもと、銀行に解約払い戻しの請求をし、預金を引き出すことが可能になります。
※預金は遺産分割の対象ですから、原則として共同相続人全員の協力がないと引き出すことができません。詳しくは「被相続人の預貯金債権は、遺産分割の対象」を参照してください。
たとえば次のような例があるでしょう。
親が子どもの名義で勝手に口座を開設し、子どもが知らないまま、その口座に預金をする
配偶者名義の口座を本人に黙って開設し、そこに自分自身のお金を入金する
いずれも自分自身の名義ではないものの、自分自身のお金を入れる、という部分が共通しています。名義こそ他人(多くの場合は家族)のものですが、やはりその預金はお金を入れた本人のものだと言えます。つまり、相続においても、名義預金・借名預金は被相続人の遺産を構成するのです。
また、未成年の子ども名義でなくても、昔であれば今よりもずっと簡単に親族名義の口座を開設できました。どこに行っても「本人確認」が求められれる昨今の状況と異なり、昔は本人確認を行うという意識が社会全体で不足しており、比較的容易に、名義預金・借名預金の口座を開設できたのです。
被相続人の遺産に該当するのであれば、その名義預金についても遺産の目録に記載することになります。そして相続人が複数いるのであれば、その名義預金も遺産分割の対象となるのです(当然ですが、遺産分割協議書にも分割対象財産として記載します)。
具体例を挙げて考えましょう。たとえば、次の場合はどうでしょう。名義預金・借名預金に当たるでしょうか。
さて、この状態で、Cさん名義の預金は、Bさんの名義預金・借名預金に当たり、Bさんが死亡した場合に、Bさんの遺産になるのでしょうか。
一概には言えませんが、この状況であればCさん名義の口座はBさんの名義預金・借名預金ではなく、Cさんの固有財産と考えることができます。
なぜかというと、BC間で、BがCが管理する口座に振り込みを行い、Cがいつでも使える状態にあったのであれば、BC間で贈与契約が成立しているとも考えることが可能です。仮に贈与契約があったとするならば、口座開設をしたのはBでも、その口座及び口座内の預金はCさんのものなのです。当然ですが、Bが死亡したときもそれはBの遺産にはならないため、相続手続は不要です。※相続手続は不要でも、贈与があったのであれば、過去の分でも、贈与税の申告と納税が必要になることがあります。
このように、名義預金・借名預金に該当するか否かは、それぞれのケースによって判断が異なります。非常に紛らわしい状況もあるため、慎重に判断してください。
通常の相続預金
遺産としての預金は、通常は「被相続人」の名義です。たとえば北洋銀行に口座を開設しているAさんが死亡した場合に、その北洋銀行のAさん名義の預金が、Aさんの遺産の一部を構成します。当然、その北洋銀行の預金はAさんの遺産ですから、Aさんの共同相続人全員の協力のもと、銀行に解約払い戻しの請求をし、預金を引き出すことが可能になります。
※預金は遺産分割の対象ですから、原則として共同相続人全員の協力がないと引き出すことができません。詳しくは「被相続人の預貯金債権は、遺産分割の対象」を参照してください。
名義預金・借名預金とは
一方で、Aさん名義ではないものの、Aさんの遺産を構成する預金があります。それが、名義預金(借名預金)です。たとえば次のような例があるでしょう。
いずれも自分自身の名義ではないものの、自分自身のお金を入れる、という部分が共通しています。名義こそ他人(多くの場合は家族)のものですが、やはりその預金はお金を入れた本人のものだと言えます。つまり、相続においても、名義預金・借名預金は被相続人の遺産を構成するのです。
名義預金・借名預金がなぜ存在するのか
名義預金が存在する一つ目の理由は、親であれば未成年の子ども名義の口座を簡単に開設できてしまうためです。親権の内容として、親は未成年者の子どもの財産を管理する権限が民法上認められているため、親であれば子ども(未成年者)の名義の口座を開設でき、それが名義預金(借名預金)につながるのです。また、未成年の子ども名義でなくても、昔であれば今よりもずっと簡単に親族名義の口座を開設できました。どこに行っても「本人確認」が求められれる昨今の状況と異なり、昔は本人確認を行うという意識が社会全体で不足しており、比較的容易に、名義預金・借名預金の口座を開設できたのです。
名義預金・借名預金ならどうなる
被相続人以外の名義であっても、その銀行預金口座が名義預金・借名預金に当たるなら、それは被相続人の遺産になります。被相続人の遺産に該当するのであれば、その名義預金についても遺産の目録に記載することになります。そして相続人が複数いるのであれば、その名義預金も遺産分割の対象となるのです(当然ですが、遺産分割協議書にも分割対象財産として記載します)。
名義預金・借名預金と紛らわしい預金
注意しなければならないのは、名義預金・借名預金に当たるか否かの判断です。名義預金・借名預金だと思っても、実際にはそうではない場合だってあります。具体例を挙げて考えましょう。たとえば、次の場合はどうでしょう。名義預金・借名預金に当たるでしょうか。
札幌市豊平区のBさんが、北海道銀行にBさんの子どもであるCさん名義で口座を開設し、そこにお金を月々振り込んでいました。Cさんの名義であるものの、振り込んでいたのは紛れもなくBさんです。Cさんは、親であるBさんがそのように自分名義の口座を作り、そこに振り込んでいた事実を知っていて、その行為について、Bとの間に合意があったとしましょう。実際にCさんはBさんから通帳と銀行印を持たされて、いつでも引き出せる状態にあったばかりか、BさんもCさんが引き出して使うことを拒絶していませんでした。
さて、この状態で、Cさん名義の預金は、Bさんの名義預金・借名預金に当たり、Bさんが死亡した場合に、Bさんの遺産になるのでしょうか。
一概には言えませんが、この状況であればCさん名義の口座はBさんの名義預金・借名預金ではなく、Cさんの固有財産と考えることができます。
なぜかというと、BC間で、BがCが管理する口座に振り込みを行い、Cがいつでも使える状態にあったのであれば、BC間で贈与契約が成立しているとも考えることが可能です。仮に贈与契約があったとするならば、口座開設をしたのはBでも、その口座及び口座内の預金はCさんのものなのです。当然ですが、Bが死亡したときもそれはBの遺産にはならないため、相続手続は不要です。※相続手続は不要でも、贈与があったのであれば、過去の分でも、贈与税の申告と納税が必要になることがあります。
このように、名義預金・借名預金に該当するか否かは、それぞれのケースによって判断が異なります。非常に紛らわしい状況もあるため、慎重に判断してください。